冬の知らせは足元から来る。
誰が言ったのかは知らない。何かの詩だったのか、あるいはただの広告か。
ただ、そんな言葉が不意に浮かんだ。
何気なく歩いていた足元から、カサリと軽くて乾いた音がした。
立ち止まって見下ろすと、黄色く色づいた葉を革靴が踏んでいた。
足を退けると、落ち葉は何事もなかったように舗装された道路の上を滑るように動いていく。視線を辿ると、同じような葉が遊戯のように歩道一面をくるくると舞っていた。
その規則性のない動きを見て、思わず家にいる娘を連想して、ふ、と口角が上がる。
そういえば、ここ最近寝顔しか見ていない。別任務が立て込んでいて帰宅は夜半になっているせいだ。
一瞬、逡巡する。
だが、いやいやと頭をふって思考を追い出す。今日もこれから戻って別任務の報告をしなければならない。それに肝心の本任務の新たな対策も考えなければ。ホリデーシーズンに入る前になんとかもう一歩、いや、半歩でも駒を進めたい。焦りは禁物とはいえ、のんびり構えていられる猶予もない。
その思いは、先日「対象者」と直接言葉を交わしたことでより一層濃くなっている。
今日中に家路につければ御の字だ。なにを悠長に「帰りたい」などと……。
――帰りたい?
どこに?
途端、ザッと強い風が吹いて、咄嗟に被っていた帽子を抑える。
つばの隙間から、黄色く色づいた葉があとからあとから枝から離れていくのが見えた。
ごく自然に、ひらひらと宙を舞う葉を捕まえる。つい先日娘が作った花栞に貼ってあった物と同じ種類だ。
その栞は今、自室の読みかけの本に挟まっている。
ーー彼女たちと出会った頃、木々はまだ青々としていた。
それは覚えている。
いつの間にか、季節がこんなにも進んでいたのか……。
「…………」
もう一度、小さく頭を振る。
今まで持ったことの無い感情に蓋をして、腕時計で時間を確認する。
けれどーー。
「……」
少しだけ。
ほんの一、二分、安否確認をするくらいの時間はある。
それくらいは許される……たぶん。
近くにある公衆電話から、慣れてしまった番号をプッシュする。
足元では、また小さい落ち葉がくるくると歌うように舞っていた。
end.







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