「森には美しい鳥がいる」
嘆きの鳥と歓喜の鳥。
人を惑わし、人を非難し、人に寄り添う鳥だという。
本当にそうだろうか。
彼らはただ、唄うだけだ。
それに意味を持たせているのは人間だろうに。
ましてや、こちらに興味など。
「よくわかったわね」
枝の上にはふたりの鳥。
その美しい羽根が雀躍して、こちらに舞い散る。
ああ、なんて美しい――。
「そうよ、そう」
「私たちは唄うだけ」
「褒めてあげる」
「嘆いてあげる」
――ここから先は、お前の世界よ。
ヴィクトル・ヴァスネツォフ『シリンとアルコノスト(悲しみの鳥と歓喜の鳥)』1896年 トレチャコフ美術館
死亡日: 1926年7月23日 著作権消滅 1996年